2021年度のKUODCまとめ
こんにちは。
京都大学おすしだいすきクラブの活動報告です。
総会をするたび、こうして記事にしていたはずですがサボっていたため1年分溜まってしまいました。駆け足で振り返りまくっていきたいと思います。
総会:
集まって寿司を食べる。
楽しい。
4月総会:タコパ
年度初めの4月、KUODCにも新入生が入ってくれました。
「なんか紅白のめでたいものを食べるべきでは」という問題意識のもと、タコを食べることにしました。
タコ。
京都中央卸売市場で買いました。めちゃくちゃ生きており、重さ測定用の網に詰めようとしてもヌルヌル脱走するためお店の人が苦労していたのを覚えています。
眼や内臓を取り、ひたすら塩でもみます。身を裏返すと全臓(ぜんぞう)がまとまっていて、刃物を使わずベリベリ外すことができました。眼も。こんな簡単なつくりでいいのか不安になります。
塩で揉むのは身を柔らかくするためでもありますが、最大のめあては全身を包む粘液(ムチン)を落とすことです。
塩を加えることでムチンが凝集し、はがれやすくなる訳ですね。このときの塩析パワーはイオン価数の2乗に比例するので、たとえばマグネシウム(Mg2+)はナトリウム(Na+)の4倍強くムチンを引き剝がします。
にがり(MgCl2)を使うと食塩より速くネバネバが取れるはずです。味はひどいことになると思いますが、タコのRTA走者は試してみてください。
今回は折衷案として粗塩(Na+以外に多価陽イオンもそこそこ入っている)を使いました。まじめに計算しましたが、精製塩より1%だけ塩析パワーが高いようです。
ゆだった。一瞬で色が変わるのが面白かったです。
いろいろ作りました。
タコめし
からあげ
寿司
アヒージョ
なんかタパスっぽいやつ
今回の学びとして「タコは歩留まりが異常に良い」というのがあります。普通の魚だと純粋な可食部は半分くらいなので、デカすぎる魚買っちゃった……となっても案外なんとかなるんですが、タコは無理でした。ちいちゃい内臓を取ったらあとは全部食べられてしまう。ゆでてもまるで縮まない。3キロサイズを6人で食べようとしたところ、かなり無理でした。
あと塩もみのとき塩を(いくらなんでも)入れすぎた記憶があります。身に塩が残ってしまっていた。茹で加減も判断が難しく、芯まで熱が通っているのと茹ですぎのラインを判別する方法を知りたくなりました。ハンバーグに竹串を刺す的な。
タコを捌いて食べる行動は非日常そのものなのでかなり楽しいです。おすすめ。
たこ焼きは作りませんでした。
5月総会:山不如帰
「目には青葉山ほととぎす初鰹」です。
青葉と初鰹はスーパーで買えますが、山ほととぎすは入手困難だったため、企画名に据えることで山口素堂を完成させました。初鰹をたたきます。我々は鴨川でカツオをたたくメソッドを確立しているため朝飯前です。
鴨川に移動し、たたきアックスで藁焼きにしている様子です。
藁をベランダで半年野ざらしにしたせいかもしれませんが、なんとなく火勢が弱く、煙がモコモコ出ている感じがしました。湿気っていたのかもしれません。みなさんが5月にカツオをたたくときには、ちゃんと干した藁を使ってくださいね。
おととしの9月に受け取り、このとき使った藁が今もベランダにあります。助けてください。
そういうのと関係なく、無事たたくことができました。
生身の寿司。
頭を煮たやつ。
これは『ガワ』です。刺身の切れ端を入れた冷や汁。
御前崎あたりの漁師料理らしいです。船上で火を使わず作れる汁物。
味噌に加えて梅も使って味付けするのが特徴で、肉体労働の休憩に飲むのはたしかに最高って感じでした。直射日光下でのカツオたたき作業を終えた直後に飲み、そのときの第一印象は「ポカリ」でした。魚属性のポカリ。これは褒めています。
ウホホウホの夕食の反省:KUODCの総会で本鰹を食べた。
— ウホホウホ (@Goreamlive) May 29, 2021
高野川で藁を燃やしてたたきを作ったところ、うまくいった節では藁ならではの薫香がついて、市販品やアルバイト先で食べるものとは一味違う味わいとなった。
脂の少ない初鰹らしい味を堪能できたと思う。 pic.twitter.com/Zmo7g3jfBV
最後に、川の中でたたきアックスを構える会員の勇姿を見てください。
まぶしい笑顔までは載せられないのが残念ですね。今年度一いい写真でした。
6月総会
入梅イワシを食べてみたかったんですが、予定していた仕入れ先が不漁のため不発。ふつうにスーパーで魚を買いました。
でっけ~し安いハマチ。
寿司にしました。
あとユッケにしたやつと、甘辛ごま醬油で和えたやつ。
つまみとしてはかなり最高なんですが魚の味は壊滅します。
今回に限っては、ハマチが巨大なうえ淡泊だったので、こういうパワーアーマーを着せてもよかったのかなと思いました。
梅雨においしくなる魚の最大手、イサキです。イサキは取れたの?
皮を炙って寿司にするのがとても好きです。皮ごと食べるので皮下脂肪を余さず食べられるのと、わずかな磯臭さがちょうど酢飯で相殺されるので猛烈な相性の良さを感じます。
前回味を占めたので、また冷や汁を作りました。
今度は宮崎あたりの郷土料理としてのやつです。出汁を取ったあと冷ますのが面倒だなあと思っていましたが、この時には水道水に出汁の素を溶かして作っていました。それでも普通においしい。こう作ると火を使わず作れるようになるので、手軽さでは普通の味噌汁を上回ります。
濃いめに作ってご飯にかけて食べました。おいしかった。
ウホホウホの夕食の反省:KUODCの総会でハマチとイサキを食べた。
— ウホホウホ (@Goreamlive) June 19, 2021
ハマチは脂が控えめで、まだ弾力があって味がさほど濃くなく、寿司との相性は微妙だったが、植物油やら醤油やらで食べる薄造りの刺身はかなりよかった。
イサキの炙りは養殖真鯛に負けないおいしさ、うまみがあって感銘を受けた。 pic.twitter.com/QGoa7y3f4g
9月:(マンタ編に旨)
なんか夏が終わりましたね。これは院試のせいです。
鷂(はいたか)に海・魚と添えて海鷂魚(まんた)らしいです。コスパが悪すぎる漢字表記。それの寿司を作る日でした。
マンタはサカマという通販サイトで買ったものです。
でかい
翼のさきっぽ部分のようでした。断面をよく見ると分かるように、中央に背骨めいた構造があり、その少し外側に勾玉型の褐色部分があります。はじめは血合いかと思いましたが、そこまで味が強くないので違ったみたいです。
切り開いた様子です。
会員総出での観察の結果、背側・腹側で色調と風味が違うことがわかりました。
これに合わせて調理していきます。
寿司。身がたいへんやわらかく、崩れました。会員の誰かが「流星街」と形容していた。流石に言い過ぎかと思います。我々から何も奪うな。
切り身にすると縞々模様が見えやすく、映えますね。
味は……薄いマグロ?って感じでした。赤身系統の味なのは見た目通り。
あとほんのり塩辛いです。マンタを含む軟骨魚は体液に塩化アンモニウムを多く含むと聞いたことがあるので、その味かもしれません。
軟骨魚に刃を入れるのは普通の魚(硬骨魚)を捌くとのはまた違った感触があり、プツプツ軟骨が断たれていく感触が面白かったです。
から揚げ。
こちらはスジが加熱で消滅し、層状に完全分離した身の食感が面白かったです。
ついでにシイラの卵も買えたので、食べました。
かなりクイーンチャッピーに似ていますね。リンク先、ちょっぴりグロいので注意してください。
中の卵部分のみを取り、イクラと同様に醬油ダレに漬けてみました。
ザルだと捉えられないくらい1粒が小さいですが、裏ごし器ならギリギリなんとかなりました。
味は「無」でした。血を洗い落としすぎた……?
そのままでは無だったため、協議の結果クリームパスタになりました。奥に写っているやつですね。濃い味をつけ、火を通すとなんとか魚卵っぽい脂感が出始めました。カルボナーラに魚属性を付与した感じ。手前に写っているのはマンタのユッケです。身の味に飽きられた魚はユッケへと送られる。
10月総会:波紋疾走
ハモを食べました。ハモが気軽に買えることが京都に拠点を構える最大の利点かもしれません。
ハモ
刃牙くん お久しぶりですね
ハモは小骨が猛烈に多いので、数ミリずつ切れ込みを入れる「骨切り」をして食べるのが一般的です。骨切り済みのハモと生身のハモをそれぞれ買って、お手本を見つつ骨切りに挑むというのが今回の企画趣旨です。
皮まで小骨が通っているのでしっかり切らねばならず、しかし皮を完全に断ってしまうと台無しというジレンマがあるので、それをどうするかが最大の難関ですね。
試行錯誤の末「端をたたんだキッチンペーパーで皮一枚の厚みを保護しつつガリガリ切っていく」が最適解でした。参加者全員骨切りは(当然)初めてでしたが、ちゃんと小骨があたらない身にすることができました。このやり方は築地魚河岸三代目に乗ってたやつの変法です。
寿司。上に載っているのは梅肉です。おいしかった。
天ぷら。
照り焼きにして、押し寿司も作りました。
これもおいしかったです。自分たちで骨切りをしたハモは市販の骨切り済みハモの倍くらい身が厚く、濃いめの味をつけてもしっかり受け止めてくれている感じがしました。フカフカの身に甘辛いタレが合わさりおいしい。山椒や木の芽を合わせてもおいしいと思います。
骨せんべい。いくら骨が硬いと行っても揚げれば勝てます。
ハモの消化管内になんらかの幼魚が居るのが見つかりました。ヒラメか何かでしょうか。ウホホウホが加熱のうえ食べていました。最高位の捕食者。
KUODCの最高戦力。
捌いたときに出た内臓やエラ、血などをチンして食べているが、見た目が壮絶なので活動報告には載せられずにいる。
あとホンビノスが手に入ったので、巨大ボンゴレビアンコにしました。見ての通り巨大なので出汁もたくさん出ます。酒蒸しにしてパスタに吸わせ、大量のオリーブオイルで武装させた格好です。これもおいしかった。身のサイズに応じて内臓も大きく、やや苦味が出るので苦手であれば除いてしまってもいいかもしれません。砂もより抜けるでしょうし。
ウホホウホの夕食の反省:KUODCの総会でホンビノスのヴォンゴレを食べた。
— ウホホウホ (@Goreamlive) October 9, 2021
ホンビノスは貝柱の繊維質がおつまみのようで歯応えがあった。
また、ワタが非常においしかった。
麺もパツパツした食感でおいしく、塩味も唐辛子の辛味に引き立てられて絶妙な味付けだった。 pic.twitter.com/dOz8gVocke
11月:紅葉狩り
秋に旬を迎える鯛=紅葉鯛 を食べようの日です。久々に中央卸売市場に行きました。売り場が棟ごと建て替わっていたり、駐車場が一時的に消滅していたりと初見殺しがたくさんありました。みなさんは気を付けてください。建物が猛烈にきれいで明るくなっていたので、旧市場よりはかなり行きやすい雰囲気でした。
鯛のほか、オキアジという魚を買いました。
めちゃくちゃ寿司にした。タイの生身・湯霜・皮、オキアジの生身・炙りをそれぞれ握りました。オキアジは脂がもりもり乗っていておいしかったです。
あとタイはアラが本領まである。何の料理にしたいか募ったところ頭が3つ必要になってしまいました。ドードリオみたいなタイがいたらいいんですけどね。
協議のうえ鯛めしが可決されました。案の定おいしかった。
あと今回奪い合いが発生したものとして「胃袋のキャパシティ」があります。寿司、鯛めしと既に2つ米料理ができていたんですが
フィッシュヘッドカレーを作ってしまいました。
これにはオキアジのアラを使っています。
クミン、カルダモン、マスタードあたりの無難な面々に加えてフェンネルのホールを過剰なくらい入れましたが、魚の、しかもアラを使ったカレーではそれくらいやって十分だったかもしれません。
ココナッツミルク、ナンプラー、尖った編成のスパイスがそれぞれ程よく共存してくれて助かりました。魚が主役って感じはあまりしませんが、料理としては間違いなく美味しいです。手軽に作りたい場合は生鮮館でタイのアラを買ってください。
ウホホウホの夕食の反省:KUODCの総会で淡路の身の活かった天然真鯛と長崎県産オキアジを調理した。
— ウホホウホ (@Goreamlive) November 20, 2021
真鯛は新鮮だったが、やはり脂は乏しく淡白なので、養殖ものの方が好きなんだとよくわかった。
オキアジは内臓脂肪がとんでもなく大きく脂が乗っていたが、これも寝かせないと味が薄いようだった。 pic.twitter.com/LyO1YZ693G
2月:(Done is better than perfectの表意文字)
前回からまた空いてしまいました。寒かったからです。
日曜開催で市場に行けず、特に企画もありませんが、総会をやりました。やらないよりは良いと画像の人も言っていますからね。
市場に行けませんがライフを中心に独自仕入れルートを持つスーパーがあり、魚は買えました。ありがたいことですね。
半裸状態ですがカワハギが手に入りました。今の時期は肝がパンパンにでっかくなっていて好きです。
あとさっそく完成品の状態で申し訳ないんですが、イワシも買いました。少しはゼロから捌き始める要素が欲しくて。
実はイワシを寿司にするのは初めてだったんですが、背骨と胸ヒレ周辺の致命的な骨さえ取ってしまえば生食できると言われ驚きました。実際その通りでした。酢で〆れば多少は柔らかくなるんでしょうが、たいへんですし。
結局、メインとしては玉子焼きを作ることにしました。カステラ風のふわふわの玉子焼きをずっとやってみたかったんですが、いざ華のある魚が手に入ってしまうとそっちで頭がいっぱいになってしまうので、良い機会だったかもしれません。
魚とエビのすり身、そして山芋を加えた全卵+卵黄にメレンゲを加えることでフワフワにしていきます。この組成は伊達巻きといっしょですね。面倒であればはんぺんで色々ショートカットできます。
大量のメレンゲが必要になるのでハンドミキサーを稼働させました。かつてはんぺんを作ったときくらいが手動でできる限界。
泡をつぶさない程度に混ぜ、型に流し込みます。型をクラフトするところから始めるのか……と考えていましたが、強者が型を貸してくれたので甘えました。ありがたいことですね。かなり多めに作ったので一部は通常の玉子焼きパンで焼きました。
パンで焼いた方はしっかり焦げました。これはお茶会をしていたら過剰にチルしてしまったためです。
お茶会を開いたのは、お菓子を持参してくれた会員がいたからです。ありがとうございます。
わが家にはマグカップがそんなに無いため、全員で同時にお茶を飲もうとすると何人かが武将にならないといけません。
焼き目が北海道チーズ蒸しケーキになってしまいましたが、オーブンで焼いたほうの玉子焼きは中々いい感じになりました。
握りました。ここまで8時間くらいかかっています。
味はおいしかったです。
みりんの甘さを主としてエビやすり身(カワハギの端身を使いました)の旨味が感じられる独特の風味。
意図した仕上がりではないので結果オーライですが、フワフワ層・プリンのように詰まった層・魚介のすり身が沈殿した層が3:1:1くらいで混じっており、それぞれが棲み分けのなされたおいしさを持っていました。純粋な反省として、寿司にするにはもう少し薄い方がいいです。単品で食べるならこれくらいでもいい。
焦げた方も案外悪くなく、餃子の焼き目のようなカリっとした食感とほんのりした苦味が効いていてアクセントになっていました。良く言えばバスク風。
カワハギも握りました。上に載っているのはポン酢のジュレです。
別途肝醬油も入れたんですが、臭み消しになるかなと思って煮切った酒を入れたら逆効果でした。醬油だけでよかった。
鮮度の関係か、単体でも食べたいとは言いにくい状態でしたが、大量のポン酢やネギで迎え撃つとおいしいです。圧倒的な脂のパワー。
あとマグロがありました。
スーパーで買ったキハダマグロとウホホウホがもらって来てくれたメバチマグロ。普段あんまり種類による味の違いを意識していなかったんですが、いざ食べ比べてみると圧倒的なパワーの差がありメバチがおいしかったです。
今日食べたのは獲って2日と新鮮なものでした。新鮮さと風味の強さはトレードオフとされますが、ここまで新鮮だと血合いまで生食できるなど発見がありました。
あとアボカドを買ったので、一緒に巻きました。これは将太の寿司で見たやつです。無難においしい。アボカドは(当然)魚ではないため単体では寿司か?という感じの仕上がりになりますが、マグロなどと合わせることで一気にトロ感が出ます。単体では弱いキハダマグロの強化パーツとしてはかなり良いのではないでしょうか。魚として見ると圧倒的に安く、捌きやすい。
メバチマグロの身をねぎ取って軍艦にしました。総会で軍艦を作るのはちょうど1年ぶりですね。軍艦サイズの海苔を作るため、全型を果たして何等分にすればいいのか、という悩みがずっとあります。今回確かめた限りは7等分がちょうど良いんですが、あまりに難しいです。
キハダはスジが多かったので、加熱も試みました。この後、皿が過熱され割れました。ばか!
余ったアボカドや肝を載せまくったやけくそ気味の軍艦群です。アボカド同士は謎の力でくっつき合うことが見つかりました。
ウホホウホの夕食の反省:KUODCの総会でマイワシ、カワハギ、えび、キハダ、メバチ、アボカド、そしてカステラ風に作った玉子焼きを寿司にした。
— ウホホウホ (@Goreamlive) February 20, 2022
えびとカワハギのすり身、山芋などを使用した玉子焼きはプリンのような風味も魚介の風味もあり、期待を裏切らずに超えていくすばらしいおいしさだった。 pic.twitter.com/IJrMyccClQ
2月分は以上です。
とても長くなってしまいました。
少し先の話になりますが、ぼんやりと当サークルの引継ぎのことを考えています。下回生(あと3年以上京都にいる人)で興味がある会員/非会員がいたらこっそりと連絡をください。
3月も何か企画をするつもりですが、とりあえずこの記事をKUODCの2021年度の締めくくりとします。
来年度もよろしくお願いいたします。