京都大学おすしだいすきクラブ活動報告

寿司を食べたり作ったりするサークルです。

活動報告『本気関東炊』

こんにちは。
京都大学おすしだいすきクラブの活動報告です。

f:id:kuodc:20201217230443j:image


今回はこれです。

 

ほん-き【本気】
[名・形動]

① まじめな気持ち。真剣な気持ち。また、そのさま。「本気を出す」「本気で取り組む」
② めんこなどの子供の遊びで、勝てば相手の出したものを取れるというルール。ほんこ。

 

かんと-だき 【関東炊】
さつまあげ・はんぺん・焼きちくわ・つみれ・蒟蒻(こんにゃく)・大根などを、汁をたっぷり使って煮込んだ料理。おでん。《季 冬》「硝子戸に―の湯気の消えてゆく/虚子」
② 田楽豆腐。また、木の芽田楽。
③ 蒟蒻(こんにゃく)を串(くし)に刺し、練り味噌を付けた食品。


つまり、全力でおでんを作る総会です。練り物の自作からやります。
読みは「ほんきかんとだき」で十分いい語感ですが「まじかんと」とします。

※総会:

集まって寿司を食べること。

楽しい。

今回も寿司は作る。

 
練り物の主材料はタラです。
調べたところ、魚でさえあればわりとなんでも大丈夫みたいですが、季節感を優先させました。魚へんに雪だし。

だいたいの練り物は以下の3ステップで作ります。はんぺんはちょっと例外です。

① 魚をすり身にする
② 塩を加える
③ 加熱する

③で揚げたらさつま揚げに、焼いたらちくわに、蒸したらかまぼこになるイメージです。こうして見ると簡単そうですね。やっていきます。

f:id:kuodc:20201217230514j:image


残念ながら丸ごとのタラは入手できなかったので、切り身スタートです。皮を引き、可能な限り骨も除きます。

 

f:id:kuodc:20201217230528j:image


塊のままだと扱いづらいので、まず包丁で粗挽きにしました。
トントントンという作業音が階下に響いてしまうので、集合住宅の人はクッションを敷く、まな板を手に持つなど工夫をしてください。
粗く砕いた身はすり鉢に移します。温度が上がりすぎるのが良くないと聞き、あらかじめすり鉢を冷凍庫で冷やしておきましたが、意味があったかは分かりません。

f:id:kuodc:20201217230542j:image


すり身にしていきます。
しれっと書きましたが大変な作業で、30分以上やっていたかと思います。フードプロセッサーとかミキサーがあるならそっちを使いましょう。
ただ、骨や皮を徹底的に除ける点ではこっちのほうが良いかもと思いました。

f:id:kuodc:20201217230553j:image


すり身にはできたんですが、腹膜やスジが目立っていたので、裏ごしすることにしました。

f:id:kuodc:20201217230609j:image
f:id:kuodc:20201217230617j:image


最初は目の細かい濾し器でやろうとしましたが、全く作業が進まなかったので大きなザルに変えました。それでもかなり大変です。
試行錯誤を含めると30分以上かかり、自分は2日後まで筋肉痛が残りました。


f:id:kuodc:20201217230632j:image


濾し終わったものがこれです。
少し前の画像と比べると滑らかになってるのが伝わるでしょうか。努力のたまものです。

ここまででだいぶすごい時間がかかりましたが、まだ最初の① すり身にするが終わっただけです。どういうことでしょうか?

f:id:kuodc:20201217230647j:image


2%重の塩を加え、再度すります。
この行程によって練り物の弾力が生まれます。

少し早口になりますね。青字のところはすべて読み飛ばして大丈夫です。

 

*   *   *


この加塩には、魚肉の筋タンパク質(アクチンやミオシン)を溶解させる作用があると言われています。
ほそなが〜い繊維状であるアクチンやミオシンを水に溶かした状態でかき混ぜると、互いにもつれ合い、網目状の構造をとります。この網目が練り物のプリプリした食感を作っているらしいです。

ハンバーグに塩を入れると粘り気が出るとか、あらかじめ振り塩をすると焼き魚の身が崩れにくいとかも同様のしくみなのかもしれません。

f:id:kuodc:20201217230658j:image


オリバが肌に粗塩を擦り込んでるのも同じ原理かと思ったんですが、どうでしょうか?

一般に、0.9%重くらいの塩が入ってれば十分な塩味を感じられるらしいです。すると今回の2%重という塩はハチャメチャに多い気がしますね。実際塩辛く、味付けだけ考えるなら多すぎるんですが、タンパク質を溶かし出すためにやむを得ず加えているという認識です。

f:id:kuodc:20201217215536p:plain

上の文献のグラフから、塩分濃度が1〜3%の範囲で特に急激にタンパク質の溶出量が増えていることがわかります。流石にこの差は大きいなあと思い、今回加える塩の量は2%としました。

実際に売られている製品では、より溶出作用の強い(らしい)リン酸塩を加える、別のしくみを利用して粘り気を出すなど色々工夫してほどよい塩味の練り物を作っているみたいです。科学はすごいですね。いわゆる塩溶性タンパク質がなぜ塩の存在下で溶けるのか、そういえば知らないので、詳しい方がいたら教えてください。

*   *   *


現実に戻りましょう。
塩を加え、さらに20分間練りました。
多くのレシピではこれよりもっと練っていますが、空腹に負けました。
しかしすり身の弾力は明らかに増しており、押し込んだときの抵抗や持ち上げる時の粘着力が格段に強くなってます。すごいですね。

成形し、火を通したら完成です。

 

f:id:kuodc:20201217230720j:image


まずちくわを作ります。
束ねた割り箸に身を巻きつけ、直火で炙っていきます。この作業はモンハン経験者にお願いしました。
端っこに焼き目をつけるとき、箸や手を水で冷やしておくのがコツらしいです。そうしないと燃えるとか。

f:id:kuodc:20201217230730j:image

 

上手に焼けました。

次にさつま揚げです。
小判型に成形したものを揚げます。

 

f:id:kuodc:20201217230739j:image


揚がったものがこれです。
なんか三角の何かが混じっていますが、これは厚揚げです。せっかくなので豆腐も揚げて作りました。

f:id:kuodc:20201217230744j:image


さらに、ごぼうをすり身で包んだものも作りました。ごぼう天ですね。マンガ肉の要領です。

 

f:id:kuodc:20201217230753j:image

f:id:kuodc:20201217230805j:image

 

揚がるとこうなります。
既にかなりおいしそうですが、理性を総動員してがまんしました。

まだ終わりません。はんぺんを作ります。
上で早口になった通り、塩を入れて練ると弾力が出てしまいます。
はんぺんにそれは不要なので、塩を入れる前のすり身を一部とっておきました。

f:id:kuodc:20201217230819j:image


メレンゲを準備します。
ただの卵白でも大丈夫らしいですが、少しでもフワっとしてくれることを期待しました。

同時に山芋・みりん・砂糖も加えています。ここらへんはふわふわ系の玉子焼きと同じ材料ですね。

 

f:id:kuodc:20201217230830j:image

 

いくらか空気を含ませたまま混ぜることができました。わざわざメレンゲをこしらえた甲斐があったんでしょうか。うれしいですね。全体が均一に混ざったら1%重の塩を加え、ほどよく混ぜてタネの完成です。

ここでの塩は味付けのためだけに入れているので、このくらいで大丈夫です。

 

f:id:kuodc:20201217230838j:image

 

クッキングシートで作った型にタネを流し込み、10分くらい茹でます。

 

f:id:kuodc:20201217230842j:image

 

f:id:kuodc:20201217230849j:image

 

三角形に切るとだいぶ「らしく」なりました。うれしい。表面がごつごつしているのは手作りの愛嬌でしょう。ここまでくると作業はかなり大詰めで、ドロドロから突然はんぺんが顕現したので大はしゃぎしました。

 

f:id:kuodc:20201217230853j:image

あと、裏漉しのとき残ったスジは刻んだネギと共に焼きつくねにしました。これはアドリブです。

 

f:id:kuodc:20201217230901j:image

 

さて、練り物すべてを大根・たまごと共に出汁に投げ込み、あとは煮込むのみです。

5時間以上ぶっ通しで作業したためかなりヘロヘロでしたが、寿司をやります。われわれはKUODCです。

 

今回の寿司ネタの仕入れや下処理はウホホウホに一任しました。ありがとうございます。

 

※ウホホウホ:

2回生。頼れる男。クラブ内で随一の寿司握力を持つ。

 

f:id:kuodc:20201217230906j:image

 

カツオの握り、炙り、秋刀魚です。

カツオは皮を引こうとすると手も包丁もテロテロになるほど脂がのっており、おいしかったです。前回の反省を活かさず日曜日に開催したんですが、血合いの身をすぐ除く、塩で締めるなどの工夫を凝らしてくれていたおかげで十分に生食できる状態でした。ありがたいことですね。

 

秋刀魚は酢締めにしてくれています。皮目の銀がきれいですね。

人間の都合に合わせて日程が決まる都合上、最高鮮度を要する魚を総会で扱うのはなかなか難しいんですが、こうして遊撃してくれる仕入れ担当がいると魚のバリエーションが一気に豊富になり、良いです。いつかは堂々と生食できるサバを手に入れたいものです。KUODCはおさかな仕入れ先情報を常時求めています。よろしくお願いします。

 

さて、寿司を食べている間におでんがいい感じに煮えたかと思います。どう?

 

f:id:kuodc:20201217230918j:image

 

!!

 

立派なおでんができました。

具材単体の写真を取る間もなく食べ尽くされたので、詳細な画像はありません。

練り物から滲み出る塩分をぜんぜん考えておらず、やや塩味の立った仕上がりでしたが良しとしました。次に活きます。柚子胡椒と合わせると一層おいしかったです。

 

f:id:kuodc:20201217230923j:image

 

 ?

 

鍋底に「謎」がありました。これは?

 

f:id:kuodc:20201217230927j:image

 

ウホホウホが持ってきてくれた、カツオのヘソ(心臓)でした。

曰く、東海地方ではおでんダネにするらしいです。ジャンケンに敗れたため味はわかりませんが、いわゆるモツ系のクセはなく、じんわりと弾力があっておいしかったらしいです。

 

さて、肝心の練り物たちですが、ちゃんと(?)練り物になっており感動しました。はんぺんとか噛み切るとちょっと口内でシュワシュワする感じがある。空気をたくさん含んでいるんでしょう。

 

強いて市販品との違いを挙げるなら、塩気の他に食感があったように思います。音でいうと「ギョムギョム」という感じでした。すり身の細かさ等によるところもあると思うんですが、もしかしたら揚げる時間や温度の影響かもしれないです。

例えるなら耳のところが分厚いパンという感じです。

市販のものはごく薄い層だけが揚がってカラっとしていますが、それより低温・長時間で揚げたことで、水分がよく飛んだ層が厚くなったのでは、と思いました。これはこれでおいしいので良いです。

 

これがずっと気になっていたので、やりました。

 

f:id:kuodc:20201217231003j:image

 

「お出汁」を入れてるよッッしたものが画像です。自己完結した晩酌という感じで、つまみ味と酒が同時に口に飛び込んでくるのがおもしろく、かつおいしいです。やってみてください。

 

最大の反省として、出来立ての練り物がめちゃくちゃおいしそうというのがあります。

揚げたてで湯気の立っているさつま揚げを出汁に入れるのは、鋼の自制心が必要になります。もう一度耐えられる自身はないので、次回おでんを作るときには山盛りの練り物を仕込み、半分は単体で食べようと思います。

 

総じてたのしかったです。それではまた次回。